2026年のドラフト会議に向けて、セ・リーグ6球団が1位で誰に入札するのかを予想しました。各球団につき、◎本命・○対抗・▲大穴の3人ずつ。判断材料は、9月時点の最新成績で洗い直した補強優先度、6月以降にスカウトが実際に残したコメント、過去10年の1位指名の傾向、そしてドラフトウォッチに投稿されたファンのみなさんの予想です。

結論:入札は3人に2球団ずつ
先に結論から。本命だけを積み上げると、きれいに2球団ずつ、3人に分かれました。
阪神タイガース
9月上旬時点で首位。そして数字がとにかく異常です。打率.248、本塁打108、防御率2.85、失点374。この4つがすべてリーグ1位で、攻守どちらにも埋めるべき大穴がありません。
だから優先度Sは該当なし。そのうえでAに置いたのが捕手と先発投手です。捕手は1軍の3人が全員ベテランで後継が不在。先発も質は高いものの27歳未満が定着できておらず、才木投手のメジャー挑戦や主力のFA流出リスクも控えています。今すぐ困ってはいないけれど、数年後に効いてくる穴を埋めにいく年です。

過去10年の1位指名は、高校生2・大学生6・社会人2。投手と野手はちょうど5対5です。10年で8年が大学生か社会人という、はっきりした即戦力志向。2021年と2022年は高校生に札を入れていますが、どちらも抽選で外して即戦力に流れています。

◎本命:渡部 海(青山学院大・捕手)
智弁和歌山で甲子園優勝、青学でも1年春から正捕手として東都6連覇に貢献した世代最強捕手。高校通算38本塁打の打撃と、二塁送球1.8秒台の爆肩を併せ持ちます。阪神はこの渡部選手を最上位候補としてロックオンし、「競合覚悟で指名する価値がある」と最大級のコメントを残しています。ファン予想も入札予想で70票中59票、球団別予想でも37件中30件。2つの投票がここまで一致した球団は他にありません。
○対抗:米沢 友翔(関西大・投手)
最速149キロの本格派左腕で、今春の関関戦では1安打13奪三振の準完全試合を達成。球団の編成担当は「秋季のリーグ戦を視察して実力を見極めたい」とコメントし、関西学生リーグには編成部トップを含めたスカウト陣が総出で入ると報じられています。地元・関西の即戦力左腕という点も、阪神の傾向にはまります。
▲大穴:織田 翔希(横浜高・投手)
阪神は8月のスカウト会議で織田投手を「最上位ランク」と位置づけたと報じられました。吉野スカウトも「ポテンシャルは一番あるんじゃないか」と評価。ファン予想では両形式とも票ゼロの完全な逆張りですが、高校生に札を入れること自体はある球団です。

読売ジャイアンツ
防御率2.94、失点384はどちらもリーグ2位で、投手陣は完全に強みです。問題は打線のほうで、本塁打87はリーグ5位、得点409も4位。首位・阪神の108本より21本も少なく、リーグ2位の投手力を持ちながら点が取れずに順位を縛られている状態です。
優先度Aに置いたのは外野のセンター。守備走塁型の併用で打てる主軸が不在で、丸選手の後継も未定です。Bが捕手・コーナー・先発・両翼で、捕手は1軍が全員30代、先発は支配下に22歳以下がゼロという事情もあります。

過去10年は高校生3・大学生6・社会人1で、投手7・野手3。かなり投手寄りの球団ですが、注目したいのは数少ない野手の獲り方です。1位で野手を指名した3回のうち2回が高校生で、2022年の浅野翔吾選手と2024年の石塚裕惺選手。野手を狙うときは高校生の素材にいく球団なんです。しかもここ5年で3度も競合を制していて、抽選に強い。

◎本命:菰田 陽生(山梨学院・投手/一塁)
194センチ97キロ、投げては最速152キロ、打っては高校通算39本塁打という超大型二刀流。この夏は甲子園に届きませんでしたが評価は落ちておらず、榑松スカウトディレクターは「投打どちらも無限の可能性を秘めている。1位競合指名になるでしょう」と断言しています。高校生の野手を競合覚悟で獲る形は、浅野・石塚とまったく同じパターン。ファンの入札予想でも70票中40票でトップでした。
○対抗:藤澤 涼介(東京ガス・外野手)
187センチ87キロの右の強打者で、今季は打率.463、OPS1.208という異次元の数字。今年は「センターを守れて長打も打てる右打者」が藤澤選手以外にほぼいません。ジャイアンツファンの球団別予想でも、菰田選手に次ぐ2番手に入っていました。
▲大穴:春山 陽登(大阪商業大・外野手)
高校通算17本塁打、大学2年秋には1試合3本塁打のリーグ新記録。榑松スカウトディレクターが「あの長打力はプロ野球のなかでもトップクラスにいけるのでは」と大絶賛し、阪神の関係者も「遠くへ飛ばす力は大学でトップクラス」と評価しています。丸選手の後継という穴に、実はいちばんきれいにはまるかもしれません。

広島東洋カープ
ここは以前の分析から評価を一つ変えました。カープといえば投手力というイメージでしたが、9月時点の防御率は3.38でリーグ4位。もう12球団屈指とは言えない数字です。
そしてそれ以上に深刻なのが打線で、得点354、打率.227がどちらもリーグ最下位。得点は5位の巨人より55点も少ない。球団自身も6月のスカウト会議で「長打を打てる捕手・野手」を最大の補強ポイントに挙げています。優先度Sは捕手。坂倉選手のFA流出リスクが絡むうえ、強打の正捕手が不在です。Aが外野の両翼で、レフトもライトも固定できていません。

過去10年は高校生3・大学生6・社会人1で、投手6・野手4。大学生中心の球団で、直近3年は3年続けて大学生、うち2年が野手です。そして無視できないのが青山学院大とのパイプで、2023年に常廣羽也斗投手、2024年に佐々木泰選手と2年連続で1位指名しています。ただカープには抽選に弱い歴史もあり、ここ5年のうち3年で外しています。

◎本命:渡部 海(青山学院大・捕手)
球団が「長打を打てる捕手」を最優先と言っている以上、まさにピンズド。常廣・佐々木泰に続く青学からの3人目の1位という文脈も加わります。ファンの入札予想でも70票中47票でダントツでした。
○対抗:宮原 廉(近畿大・投手)
最速154キロの本格派右腕で、広島の名門・崇徳高校の出身。今春はリーグ戦7試合で42回3分の1を投げ41奪三振、自責点はわずか6。実はカープファンの球団別予想では、渡部選手を抜いてこの宮原投手が1番人気でした(20件中7件、渡部選手は5件)。「渡部は競合になるから、うちでは取れない」という前提で書かれているのだと思います。広島のスカウト自身も「競合もありうるドラフト1位候補」と評価しています。
▲大穴:織田 翔希(横浜高・投手)
広島は8月28日のスカウト会議で指名候補を131人から97人に絞り込みました。田村恵スカウト部長は「正直凄い。特に変化球が良くなった。大学・社会人を含めてもトップクラス」と絶賛。そして確認した高校生の上位候補19人のうち12人が投手です。野手最優先と言いながら会議の中身はかなり投手に寄っていて、このギャップをどう折り合わせるかが焦点になりそうです。

横浜DeNAベイスターズ
ベイスターズの数字は極端に振れています。得点457はリーグ1位、打率.244も2位で、打線はセ・リーグで最も点を取っています。にもかかわらず3位に沈んでいるのは、失点450がリーグワースト2位だから。防御率3.44も5位です。リーグ最強クラスの攻撃力を、投手陣が食い潰している状態です。
なので優先度Sは迷わず先発投手。先発防御率・QS率ともにリーグ最下位で、来オフには東投手・大貫投手の国内FA流出リスクも控えています。Aがセンターで、桑原選手の退団により中堅は蝦名選手ほぼ一人。ただ今年に関しては、投手を埋めないと何も始まりません。

過去10年は高校生3・大学生5・社会人2で、投手6・野手4。実はこれ、12球団でいちばんバラけている数字です。毎年予測がしにくい球団だと言われるのは数字にも出ています。ただ一つだけはっきりした傾向があって、高校生に札を入れたときのDeNAはしっかり獲りきっているんです。2021年は小園健太投手を競合を制して獲得、2022年は松尾汐恩選手を単独指名しています。

◎本命:織田 翔希(横浜高・投手)
185センチの長身から剛球を投げ下ろす高校生ナンバーワン右腕。この夏の甲子園では大会史上最速の156キロを何度も計測し、準々決勝の花巻東戦では10奪三振の完封勝利で横浜の18年ぶりの4強進出を1人で引き寄せました。DeNAの動きは他球団と明らかに違っていて、八馬アマスカウティンググループリーダーは「一級品です」と絶賛。さらに木村球団社長兼チーム統括本部長までが甲子園に足を運んでいます。地元・横浜高校のスターで、興行的な価値も込みなら手を挙げない理由がありません。
○対抗:有馬 伽久(立命館大・投手)
最速151キロの直球にスライダー、ツーシームを操る大学屈指の左腕で、昨秋の明治神宮大会では10者連続奪三振という大会新記録を樹立。ベイスターズファンの球団別予想では、この有馬投手が1番人気でした。そして八馬スカウト自身が「スーパーだね。真っすぐもスライダーもツーシームもいい」と絶賛しています。球団の評価とファンの希望が一致している、珍しいパターンです。
▲大穴:渡辺 和大(慶應義塾大・投手)
早慶戦での3連投を含む7勝で投手4冠、防御率1.28の技巧派左腕。DeNAが今年の左腕で最も具体的な評価を残しているのがこの選手で、永池スカウトは「両サイドへの制球が非常にいい。左打者へのスライダー、右打者へのツーシームを意のままに操っている」と語っています。球速で圧倒するタイプではありませんが、ローテーションの計算が立つ完成度は大きな武器です。

東京ヤクルトスワローズ
村上選手が抜けた影響が数字に露骨に出ています。本塁打70はリーグ最下位で、首位・阪神の108本とは38本差。そのうえ失点461と防御率3.57も、どちらもリーグ最下位です。つまり長打力も投手も、両方セ・リーグでいちばん足りていない状態です。
優先度Sは該当なしとしましたが、Aが2つあります。1つが外野で、1軍の主力がベテランと外国人に偏り、和製の若い柱が不在。もう1つが先発投手で、山野投手ら若い軸は育っているものの、その後ろがベテラン依存で次世代が乏しい。打てる外野手と次世代の投手、この2つを上位で確保したい年です。

そしてヤクルトの過去10年が、今回の予想にとって最大の逆風データになります。高校生3・大学生6・社会人1で、投手8・野手2。投手8人は12球団でいちばん投手に偏った数字です。しかも高校生3人は2016年、2017年、2019年と前半に固まっていて、2019年の奥川恭伸投手を最後に6年連続で大学生か社会人。データだけ見れば、即戦力投手を獲る球団なんです。

◎本命:菰田 陽生(山梨学院・投手/一塁)
それでも本命は菰田選手にしました。村上選手が抜けたいまは、球団の平常運転で考えるべき年ではないと思うからです。そしてもう一つ。ヤクルトが10年で2人しか獲っていない野手の1位指名、その1人が2017年の高校生・村上宗隆選手なんです。10年に一度あるかどうかのタイミングで高校生スラッガーに札を入れて、球団の歴史を変える中軸を当てている。その村上選手が抜けた穴を埋めるために、もう一度そこに賭ける。球団の歴史として見れば、むしろ筋の通った指名だと思います。スワローズファンの球団別予想でも、菰田選手が1番人気でした。
○対抗:鈴木 泰成(青山学院大・投手)
最速154キロ、回転数2700回転を超えるストレートを持つ東都1部の最優秀投手。ヤクルトの入札予想では70票中38票と、全12球団で最も票が一極集中しています。過去10年の傾向から見ても、本来はこちらが本線でしょう。
▲大穴:榊原 七斗(明治大・外野手)
走攻守そろったセンタータイプの左の好打者で、50メートル5秒99の俊足と遠投115メートルの強肩。報徳学園時代は最速145キロの左腕でしたが、大学から野手に専念して才能が開花し、リーグ現役最多となる通算11本塁打を記録しています。そして紹介したいのが、阪神のスカウトが残した「ヤクルトの丸山選手より長打力がある」というコメント。他球団のスカウトがヤクルトの選手を比較対象に出して、それより上だと言っているんですね。長打力を素材からいくなら菰田選手、即戦力でいくなら榊原選手、という整理になります。

中日ドラゴンズ
最下位ですが、中身を見ると順位ほど戦力は悪くありません。本塁打103はリーグ2位、得点410も3位、防御率3.26も3位です。失点424との差はマイナス14ですから、実は投打とも中位。極端な穴が数字に出てこない球団なんです。
優先度Sは該当なしで、Aに置いたのが救援と先発。救援は防御率がリーグ最下位クラスのうえ藤嶋投手・清水投手が今オフFA見込み。先発も1軍は強力ですが、高橋宏斗投手の不振と2軍若手の伸び悩みで将来が手薄です。今の成績で困っているというより、2年後3年後に効いてくる穴です。

過去10年は高校生3・大学生6・社会人1で、投手7・野手3。数字だけ見ると普通ですが、中身が劇的に変わっています。高校生3人は2018年の根尾昂選手、2019年の石川昂弥選手、2020年の高橋宏斗投手と3年連続でまとまっており、一時期は高校生の目玉を毎年獲りにいく球団でした。ところがそこからぱったり止まって、2021年以降は5年連続で大学生。しかも直近4年は全部投手です。ここまではっきり路線が切り替わっている球団は、12球団でも中日だけです。

◎本命:織田 翔希(横浜高・投手)
直近の傾向には真っ向から逆らう予想です。でも、ここ2年、金丸投手と中西投手と即戦力投手を獲り続けても投手の層の薄さは解消されていない。そして根尾・石川・高橋宏斗と高校生の目玉を続けて獲っていた時代もある。そろそろ将来のエースを素材から育てにいく年ではないでしょうか。何より球団の熱量がすごく、永野アマチーフスカウトは「素材は間違いなくナンバーワン」、堀中スカウト部長も「高校生では頭一つ、二つ抜けている」。6月以降の中日のスカウトコメント31件のうち9件が織田投手です。そしてドラゴンズファンの球団別予想も、28件中14件が織田投手。ちょうど半数が高校生を推しています。
○対抗:米沢 友翔(関西大・投手)
スカウト会議で堀中スカウト部長が真っ先に名前を挙げ、自軍の金丸投手と「同等に近い評価」だと語っています。ファンの入札予想でも22票でトップ。球団の言葉と直近の傾向だけを見れば、いまも最有力は米沢投手です。ここは予想と球団のシグナルが割れている、悩ましいポイントです。
▲大穴:仲井 慎(駒澤大・投手)
常時150キロを超える直球を投げ込む本格派右腕で、下関国際高では遊撃兼投手として甲子園準優勝に貢献しました。中日の岡野スカウトのコメントが的確で、「150キロを常時超える出力を持つ投手はなかなかいない。先発、中継ぎどちらもいけるタイプ」。中日の補強優先度は救援と先発の両方がAでしたから、「どちらもいける」という評価はその両方に同時に効きます。知名度では及びませんが、球団の穴への当てはまり方でいえば実はいちばん綺麗かもしれません。

まとめ

補足:鈴木泰成が本命ゼロの理由
セ・リーグの本命に、青山学院大の鈴木泰成投手は1人も入っていません。実力を疑っているわけではなく、東都1部の最優秀投手で、リーグ通算10勝目の試合には日米15球団のスカウトが集まった選手です。
ただ今年は、織田投手と菰田選手の特別感、そして捕手で通算38本という渡部選手の希少性が、あまりに特殊でした。そこと並べると、完成度の高い即戦力右腕は優先度がひとつ落ちてしまう。ただしこれは理想の入札の話で、実際のドラフト会議では間違いなく鈴木投手への入札はあるでしょう。

傾向に沿ったか、逆らったか
過去10年の傾向に沿ったのが、阪神と広島の渡部選手、そして巨人の菰田選手。阪神は10年で8年が大学・社会人、広島も大学生中心で青学とのパイプが太い。巨人は野手を1位で獲るときは高校生の素材、という形にはまっています。
一方、逆らっているのが、DeNAと中日の織田投手、そしてヤクルトの菰田選手です。特にヤクルトと中日は、直近5年から6年、大学生・社会人しか1位で獲っていない球団に高校生を本命として置いています。ここが当たるかどうかが、今年の勝負どころになりそうです。

これから10月にかけて、評価はまだまだ動きます。織田投手のU-18アジア選手権、米沢投手の秋季リーグ、そして都市対抗の社会人勢。各球団のスカウト会議も控えていますので、順位はまだ動いていきます。
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