「できるものなら、やってみろ」の強心臓
投球数は160を超えていた。未体験ゾーンに足を踏み入れた末吉良丞が最後の力を振り絞ったのは、2点リードの延長11回2死三塁。初回から投げ合ってきた吉川との直接対決だった。
「先輩とか関係なく、負けたくない。ここで絶対に切る」
決め球のスライダーで二ゴロに打ち取ると、「よっしゃ、勝ったぞ!」。ポーカーフェースを貫いてきた左腕は、控えめに両手を上げてグラブをたたいた。
延長タイブレーク10回裏、無死一、二塁の絶体絶命の場面で末吉良丞が見せたのは、高校生離れした強心臓だった。右打者のインローにスライダーを連投し、送りバントの失敗を誘った。
「できるものなら、やってみろという気持ちでした」
この超強気の投球がサヨナラを阻止し、11回の勝ち越しにつなげた。
無尽蔵のスタミナを支える鍛錬
169球、3失点完投。175cm、89kgのぶ厚い体には、無尽蔵のスタミナが宿っている。
「誰よりも投げ込みました」
5月以降、3日続けて100球以上を投げ、1日はノースローという日々を送った努力が実を結んだ。延長10回には、この日最速タイの145キロを計測。疲労を感じさせない力強い投球を続けた。
14三振で完封した金足農戦に続き、この試合でも2桁12三振を奪った。沖縄勢による大会2度以上の2桁奪三振は、2010年に3度マークして沖縄に初めて深紅の大優勝旗をもたらした興南・島袋洋奨以来、3人目の快挙となった。
帽子のつばに込めた「羽」の意味
夏の甲子園を前に、末吉は帽子のつばの裏側に好きな漢字の「羽」の1文字を記していた。
「比嘉先生(監督)からよく言われるのが、フォームのバランス。『羽』という字はバランスが良くないときれいに見えないんです」
この日も3死球を与えて苦しむ場面があったが、バランスを意識してその都度修正。最後まで崩れることなく投げ抜いた。
歴史的な延長戦勝利
激闘を制してチームは甲子園30勝目を挙げて8強入り。沖縄尚学の聖地での延長戦勝利は、比嘉公也監督(44)がエースとして初優勝に導いた1999年センバツの準決勝(8-6 PL学園=延長12回)以来となる歴史的な勝利だった。
スカウトの高評価
金足農を完封した際、スカウトから「今年のドラフトでも1位かも」との声が漏れた2年生左腕。その評価は今回の投球でさらに高まったに違いない。
「30勝を達成すれば、夏の頂点が見えてくる」と末吉。大きな羽を広げて日本一を取りに行く決意を新たにした。
記録ずくめの2年生左腕
夏の甲子園で下級生が1大会2度の2桁奪三振は、2021年京都国際の2年生左腕・森下瑠大以来。また、沖縄県勢で1大会2度以上の2桁奪三振は、興南・島袋洋奨、2014年の沖縄尚学・山城大智に続く3人目。左腕では「琉球トルネード」の異名を取った島袋以来で、2年生投手では初めての快挙だった。
選手基本情報
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 名前 | 末吉良丞(すえよし りょうすけ) |
| 学年・年齢 | 2年生・16歳 |
| ポジション | 投手 |
| 投打 | 左投左打 |
| 身長・体重 | 175cm/89kg |
| 背番号 | 1 |
| 出身校・チーム | 沖縄尚学高校 |
| 最速球速 | 150km/h |
| 得意球・プレースタイル | スライダー、カーブ、フォーク 強心臓、抜群のスタミナ |
| 主な実績 | 甲子園30勝達成 1大会2度の2桁奪三振(14K、12K) 金足農戦:完封勝利 今大会:169球完投 |
まとめ
準々決勝では東洋大姫路との対戦が待っている。「できるものなら、やってみろ」の強気な投球で、さらなる高みを目指す2年生左腕の挑戦は続く。
参考記事
- スポーツ報知 2025年8月17日 - 沖縄尚学・末吉「できるものなら、やってみろ」タイブレークでバント失敗誘う超強気投球でベスト8進出